先ほどまでの初夏の陽射しが嘘のような、柳や大樹に囲まれてひんやりとした空気が漂います。この池はモネがジヴェルニーに来て10年後の53歳の時に、近くを流れるセーヌ川の支流・エプト川から水を引いて作られました。

 彼はこの池に睡蓮を浮かべ、生涯描きつづけた連作が始まるのです。目の前に広がる池に浮かぶのは、当たり前ですがオランジュリー美術館で見た睡蓮と同じでした。

 風がちょっと吹いて水面が揺れると、もうそれはさっきまでの風景とは違う。時が止まっているようで、いや実際は刻々と動いている時間をさりげないながらもダイナミックに感じる。

 緑にも青にも赤にも、時には黒にも描かれたモネの「睡蓮」は決して彼の空想ではなく、ダイレクトに飛び込んでくる印象そのものなんですね。


 モネが浮世絵コレクションからまだ見ぬ遠い国、日本の風景を空想したのでしょうか。池には緑色のLe pont japonais(日本橋)と名付けられた太鼓橋が掛けられ、頭上には藤棚が飾られています。春には淡い紫色の花の房が池にアーチをかけるのでしょう。

 この橋のどこが日本なんだろう?と日本人の僕たちは思うかも知れませんが、ここではモネのイメージの世界に酔いしれるとしましょう。

 先ほど庭にいた子供達。今度はモネの空想が生み出す見事な眺めに感激してか、日本橋の上でも歓声をあげていました。子供って純粋ですね。